藁の楯/三池崇史・原作:木内一裕――人間のクズを自らが楯になり守らなければならない警察官の矜持

あの“BE-BOP-HIGHSCHOOL”の木内一裕が書いた処女小説が原作

今の若い人たちには馴染みがないのかもわかりませんが、私が十代の頃はメチャクチャ流行ってましたよ“BE-BOP-HIGHSCHOOL”(笑)。ツッパリ(笑→死語か? 今で言うところのヤンキー(笑))コンビのヒロシとトオルによる、ケンカと恋のハチャメチャ漫画でした(笑)。

その筆者である木内一裕(BE-BOP-HIGHSCHOOL時の筆名はきうちかずひろ)が2004年に小説家デビューを飾った作品を原作として、2013年に三池崇史(脚本:林民夫)により映画化されました。木内一裕が小説を書いたことも、2013年に映画化され公開されたことも知らなかったのですが、1~2年前にTVでやっているのを偶然見かけて、途中からだったのですが観てみたらコレが面白い! すぐに原作を買って読みました。

孫娘を殺した人間のクズに10億円の懸賞金を掛けて殺そうとする発想がキモ!

物語は藤原竜也演じる清丸国秀(きよまる くにひで=人間のクズ)に孫娘を殺された元経団連会長の蜷川隆興(にながわ たかおき:山崎努)が、清丸殺害に10億円の懸賞金を掲げ、全国紙の全面広告やNetで全国民に告知し殺人を呼びかけるところから始まります。

清丸は蜷川の孫娘を暴行殺害する7年前にも同様の幼女暴行殺人を犯して服役しており、出所直後に蜷川の孫娘・知香を惨殺し逃走。潜伏している清丸がまったく捕まらず、業を煮やした蜷川隆興から懸賞金を懸けられるハメになるわけです。

10億円が手に入れば、殺人犯を殺すことなど何とも思わない連中はゴマンといるわけで、清丸は匿ってくれていた男に殺されかけ自首を決意し、福岡県警に出頭します。そこから物語が動き出すのですが、要は福岡県警から警視庁に清丸を移送しなければならず、10億円もの懸賞金が掛かったクズな男を殺して10億円を得ようとするヤカラ(笑)から、如何にして清丸を守り警視庁に移送するのか?というのがテーマなのです。

人間のクズを守るための理不尽な犠牲を強いられる警察官

移送を請け負う警視庁警備部のSP銘苅を大沢たかお、白岩を松嶋菜々子がそれぞれ演じており(※原作では白岩は男)、他にも彼らSPと共に凶悪犯清丸を移送することになる警視庁の刑事奥村に岸谷五朗、神箸に永山絢斗、福岡県警刑事に伊武雅刀が配役されています。

SP2人と警視庁刑事2人、福岡県警刑事1人の計5人がクズな清丸を守りながら、福岡県警から警視庁まで移送するのですが、10億円に目が眩んだヤカラの多いこと多いこと(笑)。一般市民はもちろん、守る側にいる人間までも清丸の命狙い始めてしまうという展開で、5人にとっては常に油断できないシーンの連続となるわけです。

ところが、刑事たちも刑事たちで、命懸けでこんなクズの犯人を移送することの意義・意味をなかなか見出だせません。常に、正義とは何か?という揺れる思いを抱きながら、それでも懸命にクズ・清丸の命を守ろうとするのです。

藁の楯は、このような緊迫した道程をスリリングに描いた新しいカタチのサスペンス映画と言えそうです。人によって評価は別れると思いますが、私は映画はもちろん、原作も面白く展開が気になって気になって貪るように読んだほどでした。興味のある方は是非!

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